ciccioneの日記

30歳を過ぎて見切りで会社を退職した人間が、再び収入を得るような仕事に就けるまでの日々を記録していきたい。

「今度2人でご飯食べに行きませんか?」

「今度2人でご飯食べに行きませんか?」

思わず誘ってしまった。お酒を少々飲みすぎたか。彼女には彼氏がいるかもしれないのに。まったくその辺を気にせず、先に言葉だけが出てしまった。

あまりにも2人で食事をしている時間が心地よかった。いつもは部長と一緒のいすゞ。他には誰とも来ていなかった。だからまさか偶然一緒になって、狭い卓でお互いが注文したものを分け合いながらご飯を食べるなんてのが新鮮だった。

別に誰かと一緒にご飯に行くことが少ないわけでもない。もうこの歳になれば女性の後輩社員だって出来てくる。仕事の様子を見ながら、困っていることがないか一緒にご飯に行くことだってある。

でも、それはあくまでも先輩と後輩。恋話とかプライベートな話もしてくれるけど、会社の関係であることには変わらない。同期に誘われて合コンに行くことだってあるが、それも何も期待していないでお付き合いだと思っている。だから余計何の関係もない人と食事をするのが新鮮だった。

「いいですよ」

彼女からスッと返事が返ってきた。別に沈黙があったわけでもなく、すぐに答えてくれたのに返事を待っにている時間がひどく長く感じられた。少しずつ春が近づいてくる中でも、まだまだ寒い夜。何を言っているんだろうとも、この寒さで少し冷静になったりもしていたから、少々驚いた。

「でも忙しいですよね?」

彼女が聞いてきた。いいえと僕はすぐに首を振る。ならよかったです、と彼女は続けて言った。

なんだかこの緊張は高校生の時に味わった以来の変な感覚だった。もう30を過ぎたいい歳なのにドキドキするなんて。

その場でLINEの交換を行う。なんだかこそばゆい感じがした。この歳になっても、こういう出会い方があるなんて。ドラマなんかでもあるまいし。

今日は一緒にエレベーターに乗った。彼女とは1階違いだった。帰ったらなんて最初に送ろうか。日程の話はまだしていなかった。落ち着いてる女性に対して焦って送っても気味が悪いだろうし。そんなことを思いながら、短い道のりを歩きながら家に向かった。

彼女にとって自分はどう映っただろうか。大人になっても恋の仕方は不器用だ。