ciccioneの日記

30歳を過ぎて見切りで会社を退職した人間が、再び収入を得るような仕事に就けるまでの日々を記録していきたい。

私、酔わなきゃやってけません。

仕事が遅くなりもう、21時前。このまま帰ってご飯を作るか、それとも外で食べて帰るか。今日の気分は、どう考えても作る気にはならない。というかこの時間からご飯を作る気にはなれない。ホントはもう30歳、しっかり自炊をして栄養バランスを考えて食事をしないといけないのだが、今日は一杯飲まないとやってられない気分だ。

とは言え、誰か誘う感じでもない。仕方ない、会社の人の来ないいつもの店に行こう。ちょっと会社から離れた気軽に入れるこじんまりしたお店「串焼きいすゞ」。意外とよく一人でご飯を食べに行く。いつからだろう、こうやって一人で普通に居酒屋でご飯を食べれるようになったのは。

道中、今日の出来事がわざわざ頭の片隅から戻ってきた。

「すいません、GOサイン出しちゃいました。。」

後輩がまだ校正中の広告を課長の(というかもっと上までの)確認を取る前に、オンスケにしないとという謎の理由で、色校に回してしまったのである。確かに校正の出し戻しが多く、遅れていた部分は否めない。ただ、色校に進める=ほぼ中身が固まったということ。色校の後に再度修正を加えるとなると、やや困るのだ。彼女が先方に伝えたのが16時過ぎ。その報告が入ったのが、18時手前。急いで制作会社に連絡をし、事情を伝え印刷会社に色校に回すのをなんとかストップさせた。何よりその後が面倒臭かった。グチグチ言い出す課長の説得ををはじめ、方々に事情の説明と今後のスケジュールの再度調整等々を行い、バタバタと動き今に至る。同じ担当で先輩後輩とは言え、完全に尻拭いだ。ほんとは本人にやらせてもよかったんだけど。

スケジューリングを任せたのは自分だし。いやいや、確認なしで進めるのはそれも違う。納得させようとする自分と認められない自分の葛藤が当然のように始まる。

幸いなのかどうなのか、後輩は何もせずまごまごしていたが、さすがに退社せず残ってはいた。一通り注意をし、今後の進め方を再度確認をした上で帰宅させた。まだ26だ致し方ない。

はー、疲れる・・・

声に出して言いたいくらいだ。ただ、声に出すと一歳老けるような気がするので止める。

ガラガラガラ。

店の戸を開けた。意外と今日は混んでるな。まぁ、いつもカウンター席だから変わんないんだけど。

あっ・・・

上着を椅子にかけようとした時、反対のテーブル席に座っている男性二人組と目が合った。若い方はどっかで見た覚えが。誰だっけ。見た顔だけど、仕事関係か、それともなんだ学生時代の誰かか?・・・ダメだ思い出せん。

串焼きセットとビールを注文。あ、レモンサワーにしておけばよかったと思った時には遅かった。手際よくビールとお通しの枝豆が運ばれてきた。

後ろの二人組は、部下らしき男性と歳が近い娘の結婚について、上司と思われる男性が話をしているようだった。結婚についてか。若い男性は結婚はまだ遠いものな気がすると言っていた。激しく同意。ついこの間、ゆっくり恋をしようと決めたばかりである。まだまだ焦ることなかれ。部下は同い年だということが分かった。

グビッと一杯ビールを飲み干す。美味い。

やはり仕事の後のビールは美味い。格別である。もはや中身が若干オヤジ化してきてはいるが、その辺はご愛嬌。

串焼きセットも美味いのである。特にごま油のこの白レバーが。

「お母さん、レモンサワー!」

「はいよー」

レモンサワーも気持ちよくグビッといく。そして

思う!仕事のことは考えない。でも、私、酔わなきゃやってけません!

そしてしばらくしてあの二人客は店を出て行った。

そうなんだ。人間の時計は、早すぎる。

「さて、どうしたものか」

娘の婚約話は突然やってきた。妻の後押しもあり、決して相手が悪い訳でもないから、婚約を認めることにした。吉田くん、吉田みさきになるのか。そんなことばかりが頭をよぎって、今週は数字を何度二度見したことか。ちょっと婿候補がどんな価値観を持ってるのか、もう少し聞いておけばよかったと今更ながらちょっと反省している。

「檜山、今日夜空いてるか」

彼はよく飲む間柄だ。年齢も近そうだし、仮想婿として話を聞くにはちょうどいい。それにそんな変な感じには聞こえないだろう。でも、檜山のプライベートを聞いてみてもいいものか。その点はちょっと思う。ただ、聞いてみたいが心を強く押した。

「どうだー檜山、調子は」

檜山も仕事は忙しそうだ。とは言え、まずは管理職の立場から全員を早く帰すのが役割だから声がけは致し方なし。それにしてもワークライフバランスが取れている会社をアピールするために、部下の尻を叩くのには気がひける。その点、課長の高橋は気が利かない。

「部長、あとでお話が」

ヒソヒソと高橋が声をかけてきた。どうやら檜山のことで、こもって話がしたいらしい。檜山が身支度を終えて呼んできたが、先に行っておいてもらうことにした。高橋かの話は、今日の檜山の役員プレゼンの件だった。聞いている限り、高橋の援護射撃の弱さにあるように思えた。まだ檜山は若いのに役員プレゼンは荷が重い。と、まずいそんな檜山を待たせ過ぎてる。高橋の報告は分かったとし、駆け足で行きつけの「串焼きいすゞ」に向かった。役員には自分から明日補足して回ろう。

「おーすまないな」

檜山がすでに数品頼んで、ビールも着くタイミングで出るように頼んでくれていた。気が効く部下だ。

乾杯。

「檜山、どうだ調子は」

「いやぁ、ぼちぼちです」

とりあえず仕事の話から始めたが、どうやら少しトーンが暗いようだった。今日の役員プレゼンのことを引きずっているのだろう。ただ、援護射撃が悪かったと思うが、それも一つの経験だ。気を紛らせるように、他も決して良いわけではないとつらつら話をした。意外と檜山のピッチが早い。つられて自分も飲んでしまった。帰ったら酒臭いと妻と娘に言われるんだろうな。

「ところで檜山は、結婚どうなんだ?」

一通り落ち着いたし、ちょっと聞いてみた。

「やっ、結婚とか正直イメージできないです・・・まだ30というか、でも、もう30というか。周りの同期は結婚してしてってますし」

そっか、檜山は30だったか。まだ、30というか、でも、もう30か。言われてみれば自分もそれくらいには結婚したな。それで気づいたら、娘を送り出す時がきてしまった。人間の時計は、早すぎる。ついぽろっと、そんなことを口にしてしまった。檜山が、ん?という顔をした。それで、ついつい娘の結婚について話をしてしまった。

「はぁ、いろいろあったんですね。でも、その彼すごいですね、しっかり一つの儀式を通過して。僕にはまだ無理そうです」

思わぬこちらからの人生相談。でもそうか、ちゃんと話をしてきた吉田くんはしっかりしてるんだな。価値観を聞くつもりが、その一言だけでなんか腑に落ちたものがあった。同世代から見てしっかりしているんだと。そのあとも身の上話や、檜山の結婚観を聞いたりした。

そんな時、娘と同い年くらいの女性が店に一人で入ってきた。

なんとなく気になり、檜山が帰りを促してきたが、もうちょっと話していたい気分になった。気づいたら22時。さすがに檜山に悪いので、解散することにした。檜山は駅で私の姿が見えなくなるまで、ごちそうさまでしたと頭を下げていてくれている。しっかりした子だ。吉田くんもこう立派な子なんだろうか。ゆとりだなんだ言うけれどしっかりしているな、最近の若い子は。そう言う意味では高橋は・・・

話し込んで帰りが思ったより遅くなってしまった。早足で家路に向かうが、きっと帰ったら妻と娘に汗臭い、酒臭いと言われるのだろう。

それにしても、人間の時計は、早すぎる。改めて檜山と話をしてそう感じた。

誘いは突然に・・・

「はーっ・・・」

役員プレゼンが微妙に終わった。これは、また同席した課長に小言を言われる。つくづく最近の自分のつかなさ具合が許せない。や、できなさ具合か。

「おい、檜山。今日夜空いてるか?」

でた、部長からの誘い。通称”ぼやきの山田”。このあと、課長経由で話が入って、今日のことのぼやきが入るのか。と、その前の誘いってことは余計長そうだ。それにしてもピンポイントの誘いなんて、なんて今日はついてないんだ。とりあえずぼやきに付き合うのには18時がお約束。定時までに仕事を終わらせなければ。既に15時、こういう時のNO残業デーは困りものである。

「どうだー檜山、調子は」

やばい、プッシュが入った。まだ10分前なのに。部長職は暇なのか?とついつい思ってしまう。もういい、明日に持ち越そう。

「部長終わりました」

「あ、あぁ。ちょっと先行っといてくれ」

は?ハーァ?プッシュしといて先に行けと。自由すぎる!なんてことは、口にできないから”すいません、ぼやかれるのでお先に失礼します”とちょっと大げさに準備で周りに訴えて会社を出る。

行くのは部長の行きつけ「串焼きいすゞ」。どうせいつもの10分後登場パターンだろうと、先に数品頼んでおき、ギリギリのタイミングでビールは頼む。悲しきかな、サラリーマンになって身につけた職業病である。案の定、部長は10分ほどして登場した。

「おー、すまないな」

席に座ると同時にビールが届く。いえいえ、と思っていないことを言いながら乾杯をする。我ながら絶妙なタイミングでの注文に満足する。その向かいでは部長がお手拭きで顔を吹いている。お手拭きなのに、なぜ顔を拭く、と毎回心の中でツッコミを入れる。さて、今日はなんのぼやきが始まるのだろうか。

「檜山、どうだ調子は」

「いやぁ、ぼちぼちです」

「ぼちぼちか。まぁそれは順調ってことだなっ」

いや、今日のを聞いていないのか、順調ではないに決まってるだろうに。と言っても、部長はそんなことお構いなしに徐々にぼやき出す。仕事について、社会について。それにしても、今日はお酒のペースが早い。いつもなら”ぼやきの山田”と言えども、女系家族だから酔いすぎるほどは飲まない。飲みすぎると、帰って妻と娘に嫌な顔をされるからと。でも素敵な奥さんと娘だと時々ぼやく。結局ぼやきなのだが。

1時間ほど延々ととりとめのない話をしたら、急に部長が真剣な顔に変わった。やばい、とうとうくるか。

「ところで檜山は、結婚どうなんだ?」

えっ?突然の変化球。こんな話今まで一度もしたことないのに。

「やっ、結婚とか正直イメージできないです…まだ30というか、でも、もう30というか。周りの同期は結婚してってますし」

「そうかぁ。お前30か。まだ30でも、もう30なんだよな。そうだよなぁ・・・」

なんか部長のトーンがおかしい。何かあったのか?家のこと?

「先週な、家に帰ったら娘が珍しくリビングに居て、私が食事をするときビールを注いでくれたんだよ。珍しいなって思って。でな、急に言い出したんだよ。明日大事な人に会って欲しいって」

「で、部長は会ったんですか・・・?」

「会ったよ。会ったんだけど、突然来るとこっちも何もできないもんなんだな。ダメだー!なんて気持ちにならないし、かと言って簡単にはよろしくとも言い出せない。ちいちゃい時の娘のことを思い出しちゃってさー・・・ちょうどお前と同じくらいの男だったな」

「で、部長はなんと?」

「いい娘になれよ、それしか言えん、と。しばらく黙ってしまったら、妻に尻をつままれたんだよ。そしたら、男の方も娘に尻つままれて、言い出したのに気づいたんだ。親子はそっくりに育つもんだな。それ見てさ」

「はぁ、いろいろあったんすね。でも、その彼すごいですね、しっかり一つ儀式を通過して。僕には、まだ無理そうですね」

そのあとも、部長の娘の話は続いた。なんで自分がこんな話を聞かされることになっているのかはよく分からない。ただ、とりあえず部長も暇な一週間を過ごしていたわけではないことが分かった。ご苦労様です。

時刻は21時を回っていた。もういい時間。部長に帰るように促す。これは家族を引き合いに出せば意外とすんなりできる。普段は。ただ、今日は部長がやや抵抗したのでしばらくまた付き合うことに。

そのとき、同い年くらいの女性が一人でお店に入ってきた。

と、そんなことに気を向けている暇なく、部長がまたぼやき出したので相槌を入れる。結局帰れたのは22時。部長を駅で見送り、家路に向かう。帰り道またいつものコンビニに寄ってビールを買う。

「216円になります」

蝉のうるさい夜だ。コンビニの喫煙スペースで一人ビールを飲みながら一服する。娘の結婚か、意外と大変なんだな。親の気持ちも。全くどの感情にも今は当てはまらないな。

「いい娘になれよ、それしか言えん。か」

部長は珍しくいい言葉言ったなと思わず一人で呟いた。

心の奥では、門出とは言いたくない。

話は突然やって来た。

「ただいま。」

「おかえりー!」

娘の声が久々に聞こえた。妻と食後の談笑でもしているのだろうか。娘も働きに出て6年目、また仕事の愚痴でも2人で話しているのだろう。我ながらよくしゃべる娘に育てたもんだ。

女子の会話にはなかなか男は入れないものである。とりあえずリビングは素通りして部屋へ上がる。そして風呂に入ってシャワーを浴びる。なぜだろう、我が家は汗をかいて帰って来た父親を見て、一瞬嫌な目をするのである。だからこうやって夕飯を食べる前にシャワーを浴びるのが夏の日課となった。

「風呂出たよ。」

ようやくエアコンのきいたリビングへ。妻が手際よく食事の準備をしてくれる。ビールを一杯を注ごうとしたら娘が、そっと注いでくれた。なんだ明日は雨か。そのまま、何事もなくまた女子2人はさっきの会話の続きを始めた。

普段、私が食事をするときには部屋に上がる娘が、まだ残って話をしている。しかも仕事じゃなくて休みの話のことを。これは明日大雨かもしれない。

とりあえず、女の会話には入れないからテレビをつけようとした。

「でね、お父さん、明日大事な人が来るからあって欲しいの。」

突然の宣言。

「あっ!?」

つい心の声が出て、テレビを消した。この歳で大事な人の話が出て来たら、そう言う話であることぐらい鈍感な父親でも分かる。妻が間髪空けずに援護射撃をして来た。

そうして今、婿候補と思われる男を向かいに座らせているのである。残念ながらいい天気に恵まれた。

そういえば、自分も若い頃あっち側に座ってたっけか?汗をかきながら、必死に会話を探してたっけか。向かいの彼も娘の合いの手を借りながら、話をしている。隣を見れば妻が楽しそうに、うんうんと話を聞いている。もう外堀は埋まったようだ。

昨日の2人の話は、事前会議だったか。こういう時は父親はどういう態度取るのが一般的なんだろうか。娘も28だ。心の中では結婚するのか、なんてちょっと思い始めてた頃でもあったが、あまりにも不意打ちだった。こちらもシミュレーションをしていない。

とりあえず出会いから仕事の話は聞いた。というか勝手に話が進んでいて、それがうわの空の間に右から左に流れた程度ではあるが。どうやら大学時代からの付き合いだったらしい。意外と長く付き合ってたんだな。そしてとうとうその言葉が発せられた。

「お父さん、娘さんと結婚させてください。」

時間がちょっと止まった。私の回答をみんな待っている。躊躇している訳ではない。ただ、あの娘がとうとう結婚か。なんとなく娘との時間が思い出されていく。あの小さくておしゃべりだった娘が、家を出ていくのか。一人娘のこの子が。

その時、横から尻をつままれた。妻の手だった。さっきまで笑顔だった3人がずっと私を見ている。そういえば自分が申し出をするときも、なかなか言い出せなくて妻に尻をつままれて言い出したっけか。よく見たら彼もつままれていたようだ。

でも言葉が見当たらない。せめてお酒ぐらいは用意しておけばよかった、口がもっとなめらかだったかもしれない。でも反対する理由も見当たらない。

「いい娘になれよ、それしか言えん。」

「いい娘ってなによ、お父さん。お嫁さんでしょ。」

「お父さん、私いい娘になるよ。」

妻娘が早速合いの手を入れて来た。まだまだ嫁という言葉に慣れていないし、娘を突然手放す気になれず、せめてもの言葉がそれだった。彼もホッとした様子だった。まぁ、いい彼そうだし。何かあったら帰って来ればいいだけだ。もちろんそんなことがないことが一番いい。それが娘の幸せだ。ちょっと父親には受け入れるのに時間が必要だが。しょうがない。もう一度心の中で思う。

「いい娘になれよ、それしか言えん。」

何気ない一日。

今日もいつもと同じ何気ない一日を迎える。

朝9:00に起きて朝食をとり、着替える。今日は休日だからちょっと寝すぎたかな。でも休日だし。それにしてもいい天気だ。外出でもしようかな。

行き先はたまには地元のみなとみらいに行こう。そしたらちょっと小綺麗な格好でもしようかな。ハマっ子として飾らずキレイめに。

駅まで10分。電車で15分揺られる。この距離がちょうどいい。近場なのに観光地だからちょっと遠出した感。庭といえば庭。たまの休日だし、カフェで優雅に時間を過ごそう。

r.gnavi.co.jp

 このカフェはテラス席からの景色がいいらしい。噂はかねがね。たまには本を読みながらもいいけど、景色を眺めるのもいいかも。

道ゆく人はやっぱ夏休みだし、若い人たちもいっぱいいるなぁ。こうやって人間観察するのもありかもしれない。子連れがやっぱ多いかも。電車埼玉まで繋がったし、どっから来たのかな。みんな東横線桜木町まで走ってて、このあたりに来ることは桜木町に行くって言うのが普通だったのを知ってるのかな?なんてちょっと思ってみたり。

ちょいちょい入ってくるLINEは一旦お休み。それにしても日差しが強い><

お昼は、これも目の保養に海を眺めたいから臨港パークへ。人があんまりいないし、だいたい地元民だから落ち着く。ランチョンマットがわりにハンカチを膝にかけ、持って来たおにぎりをいただく。

潮風の匂いとか飛んでいるカモメを見ていると、日頃の都会の喧騒を忘れる。あぁ、鳥って自由に飛べていいなぁ。自分も飛ぶことができたら、きっと楽だろうに。

なんやかんやゆっくりしてたらあっという間に15:00過ぎになっていた。出るのをもうちょい早くしておけば良かったな。ほんとはもうちょっと赤レンガの方まで足をのばしてみたいけど、電車が混み始める前に帰ろう。帰って撮り溜めておいたビデオでも見て過ごそう。

それにしても青空の下、開放的な空間は気持ちをゆったりさせてくれる。駅は若干混んでて行き来が大変だけど、まぁ致し方ない。

 

さて、これは友人のとある一日の話。この中に彼女に障害があることがわかる記述はあっただろうか。別に何も隠して書いている訳ではない。聞いたままのことを書いている。人は見た目に左右されやすい。見た目で判断し、色眼鏡をかける。バリアフリーになって行くことはとてもいいこと。でも一番変えづらいのは人の考え方。

ステラ・ヤングさんが、障害者を感動的なものに仕立てるのは感動ポルノだと言っていた。そのとおりだと思う。そもそも健常者とはなんだ?常に健康だから健常者なのか?高いところに手が届かないことは障害じゃないのか?今一度自分たちに問いかける必要があるのかもしれない。ふと、最近の出来事から書いてみた。


I'm not your inspiration, thank you very much | Stella Young

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ゆっくり恋をしよう。

25歳を過ぎた。一つ女の結婚の壁だと思っていた。30を迎えた。周りの同期がどんどん結婚していった。産休に入る子たちも増えた。

果たして自分は、いつまでこの独身状態でいるんだろう。仕事に身を捧げる、なんて同期もいるけど、ホントにそれでいいのかな。

というより、それって本音?ランチの時に売れ残り仲間(自虐)で、そんな話をするけど、ちょっと疑ったりしちゃう。

なんとなく今のままじゃいけない。そう思って職群転換をして、一般職から総合職になった。給料は当然良くなった。

頼まれ仕事ではなく、自分から積極的に動かなければいけない仕事になり、充実感は感じている。

でも、このモヤモヤした気持ちはなんだろう。どこか周りと比べてしまう自分。どこか周りの視線を気にしてしまう自分。

独身貴族なんて言われたら男みたいで嫌だ。わがままな自分。それは分かっている。

移ろいやすい女心ってこんなこと?退社はいつも21時は当たり前のようになっている。仕事とプライベートの両立。ワークライフバランス

そんなことができたらこんな状態になってはなかったのかな。女だって、そう簡単に何事も割り切れる訳ではない。

なんて、色々考えてた時、出会った言葉が

「ゆつくり恋をしよう。」

男友達が読んでる本に書いてあったコピーらしい。そうだよね、そうなんだよね。年齢ってくくりで縛っているのは自分なんだよね。

男だって30代からが落ち着きが出てきて魅力的っていうし、女だって同じなんじゃないか。年を気にせず、ゆっくり恋をしたらいいじゃん。まずは自分の時間を作って上げることから始めよっと。

まだ、30だし。

そう思いながら、教えてもらったコピーが烏龍茶のコピーだって知ったので、ごくっといっぱい烏龍茶を口にした。

また、明日からがんばろっ。

さよならしたばかりなのに・・・

会社帰りになんとなくビールが飲みたくなって、コンビニに寄った。

「合計216円になります。」

支払いを済ませ、僕はコンビニを後にした。

家まで5分もない程度の距離。夏本番の最近では、この距離でもちょっと歩いただけで暑いと感じる。

なぜクールビズと言いつつも、会社はノーネクタイだけでスーツなんだろう・・・

そう毎日ブツブツ思いながら、残りの道のりを疲れて猫背気味になった僕は、トボトボと帰る。

家に帰っても誰かが待っている訳ではない。暗い音のない部屋の電気とテレビを付けて、音を灯す。もちろんエアコンも。

テレビではしょうもない番組をやっている。そんなしょうもないテレビの音を出しながら、汗を流し、着替える。

そして、さっき買って冷やしておいたビールを空けた。残業続きで料理する気にもならない。

実家の親がこの生活を見たら、きっともっと栄養のある食事をしなさい、と言うだろう。

音としてしか認識していないテレビからは、一日のニュースが流れているがなんの情報にもならない。そんなこんなしてたら、あっという間にビールがなくなってしまった。

もうちょっと飲みたい、やっぱつまみくらいは欲しい。しょうがないからまた、さっき行ったコンビニへ出直す。

「いらっしゃいませ。」

不慣れな女の子がマニュアル通りの声を出す。さっき来たはずなのに、とちょっと表情が崩れているのを感じる。

ビール2缶とビーフジャーキーを今度は買う。

「合計540円になります。」

さっきと同じトーンで言ってくる。何事もないていで会計を済ます。ただ、ちょっとこそばゆい感じは否めない。

「ありがとうございました。また、お越しくださいませ。」

同じトーンでもいい。ビールなんて後付けだ。きっと会社以外の人肌のある声が聴きたくなって、またコンビニにやって来たんだと思った。というかやって来た。

また、明日になっても同じやりとりを交わすだけだろう。

それでも、

さよならしたばかりなのに、また、きみに会いたくなりました。