ciccioneの日記

30歳を過ぎて見切りで会社を退職した人間が、再び収入を得るような仕事に就けるまでの日々を記録していきたい。

はじめての二人飲み。

結局実家からの通勤はほんの少しで止めた。なんだか居心地の悪さと居心地の良さが混在していて、それが妙に気持ち悪かったから。甘えてしまう自分とそれに抵抗しようとする自分。そんなのがなんだか嫌になった。家を出る時、母親は何も表情は変えず「また帰ってきてらっしゃい」とだけ言った。

しばらく実家にいたから自炊する気にはなれず、久しぶりに「いすゞ」に来た。水曜だったせいか盛況のようだった。ちょっと席を探していたら、そこには見かけたことのある顔があった。

檜山さんだ・・・

すぐさま会釈した。ここで引き返すのも失礼だ。でも他に席が空いているわけでもない。そうこうしているうちに店員に席を案内された。檜山さんの隣を。

「お久しぶりです」

声がかぶった。自分の声は上ずっていなかっただろうか。しばらくお互い照れた。夏以来の再会。同じマンションに住んでいるのにしばらく会っていなかった。でも不思議とそんなに時間が空いた気がしない。

レモンハイを頼んだ。料理も注文しようとしたけど、狭いカウンターの席、何品も頼めるほどのスペースがない。料理の注文は少し空いてからにしよう。

「お疲れ様です」

とりあえず檜山さんと乾杯をした。何を話そう・・・お互いそんな空気だったと思う。夏の空を見ながら話した時はどんな話をしていただろうか。そう思い返しているときに、そっと檜山さんがお皿を差し出した。

「もし良かったらこれどうぞ。お皿を減らして頼みたいものを頼みましょ。」

料理を頼まなかった自分に遠慮して、頼んでいた料理を分けてくれた。さりげない優しさにちょっと嬉しくなる。こういうのが大人の付き合いなんだな。程よい距離感で。

「なんか緊張するからもう一杯頼んじゃいますけど、何か飲みますか?」

「そうですね。じゃぁ、同じのを。」

2杯目のレモンハイ。あんま女の子らしくない注文だなぁ、と思いつつおかわりをした。

だんだんお酒を飲んでいってお互いの緊張が解けてきたようで、仕事の話をしだした。異動の時期になったこと、今回も自分には内示が出なかったこと、上司のこと部下のこと。職種は違えど、この歳になると悩みのタネになることは同じことだった。

意気投合というのはこういうことを言うんだろうか。わーっとはならないけど、どこか俯瞰しているところ、淡々としているところ、一人になれているところ。なんとなく似通っている気がした。気づいたら一時間半くらい二人で飲んでいた。心地がいい。たまには、このご飯を済ましにくるお店で、二人飲みをするのも悪くないかもしれない。明日も仕事があるし、今日はこの辺で引き上げることにした。

帰る方面は一緒だ。いつも一人で帰る道を一緒に家まで帰る。これもなんとも不思議な感覚だ。家まで一緒だなんて。会話は相変わらず続いていた。でもプライベートな部分までは踏み込まない。気づいたら私の愚痴を聞いてもらうような形になっていた。お酒を少し飲みすぎたのかもしれない。

ここでさようなら、そんな別れ際、檜山さんがふと口にした。

「今度二人でご飯に行きませんか?」

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