ciccioneの日記

30歳を過ぎて見切りで会社を退職した人間が、再び収入を得るような仕事に就けるまでの日々を記録していきたい。

えっ、千恵さん…?

「先輩、もう帰ります?相談したいことが」

「急ぎ?ごめん。週明けでもよければ週明けでもいい?」

「あ、はい。大丈夫です」

ゆみちゃんから相談を持ちかけられたが、ちょっと今日はお断りした。ちょっといつもより身なりをよくしてたから察してくれたのかな。ちょっと急ぎっぽかったけど。でもゆみちゃんももう3年目だし、それなりに他の人に相談してくれるかな。

18:30智子と作戦会議と称して待ち合わせをした。ちょっと早い時間だったけど、サマータイムだから時間的には余裕があった。作戦会議とは言ったものの、結局智子とその商社マンとの出会い方について話を聞いただけだった。

場所は品川の「el caliente」。19:00お店に入ったら既に男性2人が席に着いていた。

「お待たせしましたー」

智子がいつもよりちょっと高めの声を出して席に向かって行った。この子のこの女の子らしいところにちょっといつも尊敬する。

「はじめまして。智子の友人の…」

あっ!!?

向かいに居た男性の一人が、あの見かけたことのある人だ。と言うかこの間マンションの下で一人でくつろいでいた時に見つかってしまった人だ。やばいやばい、どうしようどうしよう。変に思われてるんじゃないかな…

ちょっとした動揺を智子は少し訝しんだが、そのままもう一人の男性と話しながら席に着いていた。

何か会話を探さないと。目がなんか合わせられない。先日お会いしちゃいましたね、なんて言えないし。どうしよう私。変に映ってないかな。まずは何事もなかったように冷静に冷静に。

 

予定の時間より少し早めに、大石と予定のお店に着いた。大石は会社の外で会えるのが楽しみといったような様子だった。智子さんがどう言う人でと行きの電車の中でも語られた。一応、一緒に来る千恵さんについてもショートの大人っぽい女性だとは聞かされてきた。俺は今日千恵さんの相手をすればいいんだな。

女性陣がやってきた。

あっ!?

智子さんはすぐに「お待たせしましたー」と来たからすぐ分かったが、千恵さんってあの人だったのか!えっ、どうしよう俺。まさかこんな展開で会うとは。何、何て話しかければいいんだろ。こないだはゆっくりされてるところお邪魔しましたなんて言えないし、「いすゞ」でなんてことはもっと言えない。何も気づいていないふりするか。でも相手も完全にこっちを認識している。う〜ん、何この状況。まずはお酒か。お酒じゃないか。

お互い変に立ったままな状態になってしまった。

「あっ、どうぞ座ってください」

とりあえず当たり障りのない言葉をかけた。

「何?なんかあった?」

大石がズカズカと人の混乱に入って来た。

「千恵さん、初めましてだけど、こいつちょっと人見知りなところがあるんで許して。あ、俺大石です。で、こいつは檜山。会社の同期なんです」

お、とりあえず大石よくやった。とちょっと思った。でもなんか気まずいー。このあと普通の展開なら、どこに住んでんですか?って話になって、なんだ二人同じ駅なんじゃん。奇遇だね。なんてことを大石は言いだすだろう。いやいや、マンションまで一緒なんじゃい。

向こうをちらっと見ると、ちょっと目を伏せられる。まぁ、そうだよな。ついこないだマンションで会っちゃったばっかだし。ぬーん。

場はさすが営業。大石の段取りで整えられてった。