さよならしたばかりなのに・・・
会社帰りになんとなくビールが飲みたくなって、コンビニに寄った。
「合計216円になります。」
支払いを済ませ、僕はコンビニを後にした。
家まで5分もない程度の距離。夏本番の最近では、この距離でもちょっと歩いただけで暑いと感じる。
なぜクールビズと言いつつも、会社はノーネクタイだけでスーツなんだろう・・・
そう毎日ブツブツ思いながら、残りの道のりを疲れて猫背気味になった僕は、トボトボと帰る。
家に帰っても誰かが待っている訳ではない。暗い音のない部屋の電気とテレビを付けて、音を灯す。もちろんエアコンも。
テレビではしょうもない番組をやっている。そんなしょうもないテレビの音を出しながら、汗を流し、着替える。
そして、さっき買って冷やしておいたビールを空けた。残業続きで料理する気にもならない。
実家の親がこの生活を見たら、きっともっと栄養のある食事をしなさい、と言うだろう。
音としてしか認識していないテレビからは、一日のニュースが流れているがなんの情報にもならない。そんなこんなしてたら、あっという間にビールがなくなってしまった。
もうちょっと飲みたい、やっぱつまみくらいは欲しい。しょうがないからまた、さっき行ったコンビニへ出直す。
「いらっしゃいませ。」
不慣れな女の子がマニュアル通りの声を出す。さっき来たはずなのに、とちょっと表情が崩れているのを感じる。
ビール2缶とビーフジャーキーを今度は買う。
「合計540円になります。」
さっきと同じトーンで言ってくる。何事もないていで会計を済ます。ただ、ちょっとこそばゆい感じは否めない。
「ありがとうございました。また、お越しくださいませ。」
同じトーンでもいい。ビールなんて後付けだ。きっと会社以外の人肌のある声が聴きたくなって、またコンビニにやって来たんだと思った。というかやって来た。
また、明日になっても同じやりとりを交わすだけだろう。
それでも、
さよならしたばかりなのに、また、きみに会いたくなりました。