妄想小説
「今度2人でご飯食べに行きませんか?」 思わず誘ってしまった。お酒を少々飲みすぎたか。彼女には彼氏がいるかもしれないのに。まったくその辺を気にせず、先に言葉だけが出てしまった。 あまりにも2人で食事をしている時間が心地よかった。いつもは部長と…
結局実家からの通勤はほんの少しで止めた。なんだか居心地の悪さと居心地の良さが混在していて、それが妙に気持ち悪かったから。甘えてしまう自分とそれに抵抗しようとする自分。そんなのがなんだか嫌になった。家を出る時、母親は何も表情は変えず「また帰…
今日は一人でいすゞに来た。いつもなら部長と一緒だが、部長は娘さんの結婚式の云々で誘ったものの珍しく断られた。あまりにも珍しく、つい驚いた顔をしてしまった。 「なんだ、おかしいか?」 ついつい出た自分の表情を読み取られてしまった。でもこちらか…
実家から会社に通うようになってしばらく経った。 どこか高校時代に戻ったような気分になる。大学に入ってから一人暮らしを始めた。家が嫌だったわけではない。ただなんとなく家から出てみたくなった。 だから自分の部屋は高校時代のまま止まっている。使わ…
いつから一人が好きになったんだろう。 ベランダで一人佇みながら考える。 学生時代は、常に輪の中にいた。どこか斜に構えたスタンスでいたものの、学校という狭い社会のカーストの中で、頂点に立つグループの中に自分はいた。トイレでだべったり、屋上に侵…
久しぶりに朝まで飲んだ。何なら昼前までと言ってもいいくらいの時間まで。 この歳になると明け方まで飲むのは体力がいることをつくづく思い知らされる。朝、人が出かける時間の電車に揺られ家路につく。いつもならこれから出かけるという人たちが乗っている…
久しぶりに帰省した。 降り立った妙蓮寺の駅は、随分と様変わりしていた。若返っている。美容院はやたらあるし、フィットネスクラブまでできて、お洒落なパン屋などもできている。たかだか数年ぶりに帰ってきたに過ぎないのに。 それでも病院の数はやたらと…
「檜山ー」 「はい」 「行くぞー」 「あ、はい。もう少々お待ちいただけますか」 「じゃぁ、先に店に行ってるから」 「あ、急ぎます・・・」 ぼやきの山田からの誘い。考えてみたらこれも久しぶりだ。最近お互い年末ということもあり忙しかったから、あまり…
「あー疲れたー」 疲れが声に出てしまう。最近はため息だけじゃなく、疲れたを声に出してしまう癖が出てきてしまった。三十路を迎えた女子がこれでいいのだろうか。でも疲れたものは仕方ない。 もちろん職場ではこんなことは口にしない。年相応にしおらしく…
随分涼しくなってきたものだ。 今日も”ぼやきの山田”に連れられて、いすゞに向かう途中ふと思った。もう秋なんだ、と。 「おーい、檜山行くぞぉ」 いつもの一言でまた行くことになった。でも下心があった。ここに来ればまた彼女に会えるんじゃないかなと。連…
あれからまた普通の日々を送ってる。 檜山さんと一緒に帰った日、電車の轟音で聞き取れなかっただろう声を、しっかり聞いていてくれた。なんだか照れ臭くなって窓の外をずっと見てしまっていたけど、とても好感の持てる人だった。 途中コンビニに寄って別れ…
「今日はありがとうございました…」 「いえ、こちらこそ…」 10分ほど前に大石と智子さんと解散した。JR組と京急組で別れた。そして今、京浜東北のホームに千恵さんと並んで立っている。見かけていることを言っていいのか、とりあえず当たり障りのないこと…
「千恵さんは何のお仕事されてるんですか?」 「あ、私は一応化粧品関係の仕事をしています」 「めっちゃ華やかな世界ですねぇ!」 「や、そんなことないですよー。地味なことばっかですよ」 大石さん感謝。とりあえず対面と直接いきなり話すことにならなく…
「先輩、もう帰ります?相談したいことが」 「急ぎ?ごめん。週明けでもよければ週明けでもいい?」 「あ、はい。大丈夫です」 ゆみちゃんから相談を持ちかけられたが、ちょっと今日はお断りした。ちょっといつもより身なりをよくしてたから察してくれたのか…
9月8日(金)。 「商社マンって暇なのかな?」という入り方で、智子から合コン開催日の連絡が入った。そういう自分も暇じゃね?と心の中でツッコミを入れる。ただ、よくよく考えてみたら、その日が空いていた自分も暇人だと、ちょっと自分に萎えた。それに…
案外あっさりだった。 友人たちとちょっと揉めた件、自分の中で妥協した。ゆき宛に 「こちらにも言いたいことはありますが、反省中」 とLINEを送ったら一日丸々既読スルー。 マジか。逆に向こうがキレるパターンのやつ?しょうがないから再度 「ごめん。」 …
最近、ちょっとしたすれ違いでイラっとしてしまった。 休日、ゆきと智子何人かで集まる予定だった。ちょっとしたきっかけで知り合った仲間。集まる予定といっても、何時にどこと言うことが全く決まっていなかった。決まっていたことと言えば、智子がなんかみ…
久しぶりに同期との飲むことに。ただ、調子乗って来るんじゃなかった、と若干思っている。 数時間前、役員プレゼンが無事通ったとのことで、部長が嬉しそうに起案した稟議を持ってやって来た。あのダメ出しを喰らった稟議がついに経営会議を通った。なんとも…
「ちょっと帰り遅くなるかもー!」 「気を付けて行ってきなさいよー」 同じフロアの2部屋隣の家から母娘の声がした。 今日はお盆だし、休みを久々に取った。しかしながら、あいにくの雨。好きなだけ寝て、掃除して、撮り溜めていたビデオを見て、あっという…
うだるような暑さ。歩けばすぐ汗が背中を流れる。 改めて思う、なぜ夏場もスーツなんだろう。社会人としっかりして見えるためだけなのだろうか。であれば、クリエイティブと呼ばれる業種の人たちが羨ましい。 そんなことを思いながら今日も出勤をする。サマ…
仕事が遅くなりもう、21時前。このまま帰ってご飯を作るか、それとも外で食べて帰るか。今日の気分は、どう考えても作る気にはならない。というかこの時間からご飯を作る気にはなれない。ホントはもう30歳、しっかり自炊をして栄養バランスを考えて食事…
「さて、どうしたものか」 娘の婚約話は突然やってきた。妻の後押しもあり、決して相手が悪い訳でもないから、婚約を認めることにした。吉田くん、吉田みさきになるのか。そんなことばかりが頭をよぎって、今週は数字を何度二度見したことか。ちょっと婿候補…
「はーっ・・・」 役員プレゼンが微妙に終わった。これは、また同席した課長に小言を言われる。つくづく最近の自分のつかなさ具合が許せない。や、できなさ具合か。 「おい、檜山。今日夜空いてるか?」 でた、部長からの誘い。通称”ぼやきの山田”。このあと…
話は突然やって来た。 「ただいま。」 「おかえりー!」 娘の声が久々に聞こえた。妻と食後の談笑でもしているのだろうか。娘も働きに出て6年目、また仕事の愚痴でも2人で話しているのだろう。我ながらよくしゃべる娘に育てたもんだ。 女子の会話にはなか…
25歳を過ぎた。一つ女の結婚の壁だと思っていた。30を迎えた。周りの同期がどんどん結婚していった。産休に入る子たちも増えた。 果たして自分は、いつまでこの独身状態でいるんだろう。仕事に身を捧げる、なんて同期もいるけど、ホントにそれでいいのかな。…
会社帰りになんとなくビールが飲みたくなって、コンビニに寄った。 「合計216円になります。」 支払いを済ませ、僕はコンビニを後にした。 家まで5分もない程度の距離。夏本番の最近では、この距離でもちょっと歩いただけで暑いと感じる。 なぜクールビズと…